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”SAR干渉画像に含まれる誤差は?” 干渉SARのしくみ 上級編1

干渉SARを用いて地表変動を画像化する場合、初期干渉画像の干渉縞(フリンジ)の縞模様が直接、地表変動を表しているわけではありません。それは、2観測の位相の差が地表変動以外の影響を含むからです。

SAR干渉画像に含まれるもの

2観測の位相の差は地表変動以外の影響を含みます。それらは、(a)利用した2つの軌道が完全に同一でないことから生じる縞模様で、軌道縞や地形縞と呼ばれる2つの軌道差と地表の形状に起因する縞模様、(b)電離層や対流圏などの伝播遅延の空間的擾乱による縞模様の2種類です。したがって、地表変動を抜き出すためには、初期干渉画像からこれらの縞模様を除去する必要があります。この際、除去する方法が正確でないと地表変動測定に誤差を生じます。

(a)の軌道縞に関しては、2時期の人工衛星軌道間の位置関係(基線値)と地表のターゲットの位置から厳密にパターンが再現できるので、これを利用して補正します。

また、地形縞についても、対象となっている地表のデジタル標高データ(DEM)があれば、同様に幾何的な数値計算によって補正が可能です。

日本では、国土地理院の50メートルメッシュの標高データが全国をカバーしており、現在の干渉SARによる地表変動検出に十分な分解能と精度を持っています。この地形縞除去手法は、2回のSAR観測データを使用するので2パス法と呼ばれます。

図9 地形縞

図9 地形縞

DEMが存在しない場合でも、地表変動がないか、または地表変動の速度が一定である別のペアのSAR干渉画像の地形縞だけを取り出して補正する方法もあります。この手法は、使用するSARデータの数に応じて、3パス法または4パス法と呼ばれます。

このようにSAR干渉画像から地形縞を取り去る場合には、別の干渉SARデータとの差分をとったり、DEMから干渉SARの地形縞をシミュレーションしたものの差分をとるので差分干渉SAR(differential SAR interferometry)と呼ばれることがあります。基線長が完全に0であれば、地形縞は0になりますが、実際に基線長が0になることはないので、地表変動検出の干渉SARはすべて地形縞を差分で取り除く意味で差分干渉SARになります。

センチメートルオーダーで地表変動を検出するためには、基線値もセンチメートルオーダーの精度が必要とされます。しかし、一般に衛星の軌道情報は、ときには100メートルを越えるような誤差を持っていることも多く、上記の(a)を確実に除去するために、標高が既知である点の干渉画像の位相を用いて基線値推定を行うなどの、さまざまなノウハウが必要とされます。

(b)のうち、電離層の影響については、SIR-C(Shuttle Imaging Radar C,1994年に行われたNASAのスペースシャトルによる高度220キロメートルほどからのSAR観測)のLバンド(波長約24センチメートル)とCバンド(波長約6センチメートル)の同時観測結果からは、この影響は見つかっていません。しかし、一般にSAR人工衛星はSIR-Cより高高度を飛行しているので、実際には、電離層の影響もあると思われます。

図10 伝播過程での誤差発生

図10 伝播過程での誤差発生(b)

その他、対流圏の水蒸気擾乱による遅延は非常に大きく、SAR干渉画像の誤差として問題となります。さらに、これら以外にも地表の植生の変化、大地で体積散乱している反射波の土壌の含水率変化による反射位置変化などによって、誤差が生ずるといわれていますが、現在のところ、上記(a)と(b)が主要な誤差要因です。

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